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第120回 伊万里海洋少年団(2016年4月30日掲載)

●●広がる わたしたちのエコ活動●● vol.12

 地球温暖化や生態系の保護、ゴミの排出削減など、環境問題を解決するためには、継続した取り組みが必要です。環境保全活動の事例を通年でお伝えしてきた「エコライフ・エコライブさが」は、10年目を迎えました。節目となる今回のシリーズでは、これまで本企画で取り上げてきた身近なエコ活動、行政や企業の動きを中心に再びスポットをあて、地道な活動の広がりや周囲の人たちの意識の高まりを紹介します。

●●●カブトガニ産卵地で清掃28年●●●/●●●海、生き物守る心つなぐ●●●

 

再【メーン】2015年度清掃活動(提供) - コピー.JPG
カブトガニの産卵地で清掃活動をする伊万里海洋少年団の団員たち。19人が約2時間、ごみ拾いに汗を流した=2015年7月20日、伊万里市の多々良海岸(提供写真)

 「毎年清掃活動をするけど、いつもごみが大量にある。なくなるまで続けないといけない」。そう話すのは、カブトガニの産卵地、伊万里市の多々良海岸で28年間清掃活動を続けている伊万里海洋少年団(徳永政敬団長)の団員、清和高3年の栗原久奈さん(17)と同校1年の礼奈さん(15)姉妹=伊万里市=。海岸沿いにはガラスの破片や割れた花瓶も落ちていて、清掃活動に参加する小学校低学年の団員がけがをしないか気をもむという。
 少年団は伊万里と唐津、小城3市の小学生から高校生までの14人が在籍。毎週日曜、手旗信号やロープワーク、カッターなどの訓練を通して海に親しみながら、心身を鍛えている。清掃活動は1988年から年1回、カブトガニの産卵期に合わせて実施している。継続した活動が評価され、昨年、「海の日」にちなんだ海事関係功労者の国土交通大臣表彰を受け、今春はボランティアなど社会奉仕活動が対象の緑綬褒章を受章した。
 

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「カブトガニは自然のバロメーター。数が少なくなると、海の環境が悪くなっているはず」と話す伊万里海洋少年団の徳永政敬団長=伊万里市の多々良海岸

 ●●自転車掘り出すことも●●

 2億年以上前から姿形が変化しておらず、「生きている化石」とも呼ばれるカブトガニは、環境省のレッドリスト(絶滅のおそれがある野生生物のリスト)で「絶滅危惧種」に分類されている。つがいのカブトガニは6~8月、満ち潮にのって多々良海岸の砂浜にたどりつき、産卵を終えると引き潮にのって海に帰る。産卵の様子を観察するイベントも開かれているが、砂浜に流れ着くごみは後を絶たない。
 少年団の清掃活動では、団員は指を切らないよう軍手を二重にし、空き缶やお菓子の袋などをゴミ袋に入れていく。大きな発泡スチロールの箱にビール瓶がきれいに並べられていたこともあれば、半分以上砂に埋まった自転車を掘り出したこともあるという。
 団員が減り、清掃活動ができなくなりそうな時期もあった。1979年の結成当初50人いた団員は、部活動への参加などにより、20年ほど前には激減。団員2、3人で清掃活動をすることもあった。ここ最近はテレビでの活動紹介といったPRなどを通して入団の希望があり、伊万里市外の団員も増えた。

 

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カブトガニのつがい。少年団のほか、地元住民らも清掃活動に取り組み、「生きている化石」の保全に努めている=伊万里市の「伊万里湾カブトガニの館」

 ●●「子どもたちの背中見て」●●
 清掃活動は、カブトガニを保全することはもちろん、もう一つ大きな意義がある。徳永団長(84)は「ごみを拾う子どもたちの背中を見て、地域の人がごみを散らかしたらいかんという意識づけもできる。まわりの大人たちに、ごみについて考えてほしい」と力を込める。
 今年7月も「海の日」の18日に清掃活動を予定している。来年3月末で退団する清和高3年の加藤朱莉さん(17)=唐津市=は「小学生の団員たちにも続けてほしいし、団員としては最後の清掃活動だからいつも以上にごみを拾いますよ」。地域の海を、生き物を大切にする気持ちをつなげていきたいと思っている。

 

 

【お知らせ】2016年度は5月から「芽生えたエコの輪をもっと大きく」をテーマに掲載します。

 

【エコさが基金の告知】
エコさが基金助成団体募集中!!

 佐賀新聞社と佐賀未来創造基金は、環境保全活動に取り組む県内のNPO法人やボランティア団体などに活動資金を助成する「エコさが基金」への応募を募っている。1団体あたりの助成額は最大20万円。締め切りは5月10日(必着)。同基金は県内企業34社の協賛で展開中の公共広告キャンペーン「ストップ・ザ・温暖化-エコライフ・エコライブさが」の一環で設けた。応募は自薦、他薦を問わない。所定の応募用紙にこれまでの活動概要や助成金の使途目的などを明記し、活動が分かる詳しい資料を添えて、公益財団法人佐賀未来創造基金「エコさが基金」係(〒840-0813 佐賀市唐人2-5-12 TOJIN茶屋3階)に申し込む。応募用紙は佐賀新聞社、佐賀未来創造基金のウェブサイトからダウンロードできる。問い合わせは佐賀新聞社アド・クリエート部、電話0952(28)2195(平日)。または佐賀未来創造基金、電話0952(26)2228。

 

●●●●プレイバック●●●●

●●●繁殖地、国天然記念物に指定●●●

 

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 伊万里海洋少年団による多々良海岸の清掃活動は、2010年10月27日付で取り上げた。当時もアシや流木といった漂着物のほか、ペットボトルや空き缶などポイ捨てされたとみられるごみが多かったが、いまも地道な保護活動が続いている。
 伊万里高校理化・生物部は53年前からカブトガニの調査研究を続けている。多々良海岸での産卵や生態調査の研究成果が国内の研究者から称賛され、保護活動の源流となった。
 同部のほか、1979年に結成した「伊万里市カブトガニを守る会」が産卵前の多々良海岸での清掃を、海岸の地元・牧島地区では住民を中心に2007年に「牧島のカブトガニとホタルを育てる会」が発足し、成体や資料を展示する「カブトガニの館」を運営。市民らによる熱心な保護活動が評価され、昨年、多々良海岸の繁殖地が国の天然記念物に指定された。

 

【MEMO】 2015年つがい数、のべ453対

 伊万里高校理化・生物部と伊万里市は共同で毎年、多々良海岸など3カ所で、産卵したカブトガニのつがい数を調査している。つがいは満潮時に砂浜を訪れるため、1シーズンあたり合計40日ほど調査を実施。2015年はのべ453対を確認した。
 ここ数年は約400組台で推移している。10年ほど前から同高は伊万里市内の小中学校と協力し、カブトガニの幼生を飼育、放流している。カブトガニは10年くらい成長すると産卵できるようになるため、幼生の保護、飼育活動の成果が出てきている可能性もあるという。

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