住生活月間特集2007 

 

 10月は、住まいやライフスタイルへの関心を高め、住生活の向上を目指そうという「住生活月間」。

佐賀新聞では、「住生活月間特集」を毎週金曜日、4週にわたり掲載します。

快適な住環境づくりにお役立て下さい。

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『住宅の風土性考』 佐賀大学准教授 五十嵐 勉

 仕事柄か、フィールド調査や出張などで「外泊」が多い。8月には、飛騨白川郷の世界文化遺産「合掌造り民家群」を訪ねた。茅葺(かやぶき)屋根の合掌造り民家群は、そのほとんどが現にそこに人が暮らし、活用されている。しかしながら、そのような民家景観を育んだ生業や暮らしは大きく変化し、マス・ツーリズムとして消費されるのみの文化的景観地区となっている。合掌造りの柱の建材や良質な茅は、この周囲の里山からは産出されない時代である。かろうじて、市民も含めたコミュニティによる茅の葺き替え作業や茅葺技術の継承と文化財としての修復補助金、そして観光収入によって、その景観が維持されている。

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 住宅は、本来、その土地の気候、建材・壁材・屋根材などの地域資源とそれを活用する職人技術、神話や信仰・慣習などの文化的伝統、そして農林漁業・商工業などの生業と密接に結びついていた。それらの総体としての集落・都市景観(文化的景観)は、「自然と人、人と人との繋がり」、つまり風土性の表象なのだ。画一化・様式化・パッケージ化された現代住宅は、一面で多様な景観の喪失でもある。

 歴史的な町並み・村並み景観は、なぜ保全されねばならないのか。屋外広告物は、なぜ整然と統一されたものでなければならないのか。街路樹や生垣のある緑地景観は、なぜ必要なのか。景観法の施行に伴って、各地で景観条例や景観計画の策定が進められている。景観を構成する一つ一つの住宅、ビル、街路・・・、建てる者は、その建造物と周囲の「繋(つな)がり」を考えて行動せねばならない時代なのだ。

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 食材の地産地消やフードマイレージが地域再生・環境保全の鍵であると同じように、県産材の地産地消・地産地建やウッドマイレージに対する配慮と行動が、川上と川下の「繋がり」を再生し、豊かな人間性や居住環境・生活環境の回復につながるのではないだろうか。住生活月間を機に、思いをめぐらしてみてはいかがでしょうか。

 さて、僕のマイホームといえば、このような風土性や「繋がり」とは無縁の分譲マンションである。せめてもの入居後の「繋がり」へのこだわりは、鹿島市の古民家再生建築家M氏にお願いして、しつらえた古材使用の壁面収納棚のあるリビングルームである。ここでの家族のだんらんが、癒やし・和み・睦とも呼べる我が家の空間なのである。
(写真はイメージです)



いがらし・つとむ 1957年福島県生まれ、佐賀大学農学部地域資源学研究室(農村景観論・農村開発論)、佐賀県住生活基本計画策定委員、文化的景観「蕨野の棚田」保存活用検討委員会委員長、県産木材利用推進プロジェクト会議委員長

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