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ゆるキャラブーム たかが、されどの波及効果(11月12日付)

 観光地や特産品をPRする「ゆるキャラ」がまちおこしの主役になっている。佐賀県内でも唐津市の手作りキャラが全国グランプリで2位になり、市や町の新しいマスコットが相次いで登場している。全国ブランドは億単位の経済効果が語られ、波及効果は大きい。ブームは続きそうだ。

 

 唐津くんちの期間中、「唐ワンくん」は先々で引っ張りだこだった。滋賀県彦根市で開かれた「ゆるキャラグランプリ」で2位に選ばれたばかりで、ブログでチェックしてきた観光客が待ち受けていた。今月のスケジュールは月末まで10件以上の行事で埋まっている。

 

 「ゆるキャラ」は2年前、彦根城の「ひこにゃん」が大ブレークし、以来各地で新しいキャラクターが生まれた。県内でも大学や警察などお堅い公的機関を含め20以上の宣伝大使が活躍している。

 

 起用の理由はもちろん、宣伝力だ。人気が出れば多くのメディアが取り上げる。しかも着ぐるみやデザイン費はさほどかからず、少ない費用で大きなPR効果が得られる。

 

 例えば「ひこにゃん」が登場した年、グッズ販売や彦根城を訪れた観光客の消費など、経済効果は滋賀大学の試算で174億円に上った。ことしの「ゆるキャラまつり」も3日間で4億3千万円の経済効果があったという。

 

 さらにインターネットの普及も大きな要因だ。現地に行かなければ会えなかったご当地キャラが、ネットを介して身近な存在になった。「唐ワンくん」が先の携帯投票で、知名度が高い「ひこにゃん」を大きく引き離して2位になったのもその一例だろう。

 

 こうしたブームを社会の「成熟」ととらえるか「幼稚化」ととらえるか。人それぞれだろうが、本来、日本人はキャラクターが好きで、玩具メーカー研究所の調査では8割の人が何らかのキャラクター商品を持っているそうだ。

 

 脳科学者の養老孟司さんは、日本は暗黙のうちに同質性を求める社会であり、人との違いは目立ち、逆にキャラが立ちやすい社会だという。さらに「ひこにゃん」「ポニョ」を例に、言いやすく何となくかわいいことが、音の響きを心地よく感じる脳のある部分を刺激すると読み解く。

 

 加えて「ゆるキャラ」の魅力は対外的な宣伝効果だけではない。デザインを決める段階から、地域のアイデンティティーを再確認し、一体感を高める存在になっている。

 

 「唐ワンくん」は唐津市の委託を受けたNPO法人、子育て支援情報センターが「徹底活用事業」を展開し、小学校の運動会や朝のあいさつ運動、交通安全運動にも出掛けている。市民生活にとけ込む中で「普段ほとんど会話をしない子どもと、唐ワンくんの話題をきっかけに話すようになった」という声も届いた。

 

 最近も、神埼市のマスコット「くねんワン」「くねんニャン」や、佐賀ユニバーサルデザインのマスコット「ゆうゃん」がデビューし、基山町はイメージキャラクターと愛称を募集している。

 「一村一品」ならぬ「一町一キャラ」の様相だが、単なるブームに乗った話題づくりではもったいない。行政の垣根を取り払い、多くの市民が応援団としてかかわるまちづくりのシンボルにする。そういう存在であってこその「公的ゆるキャラ」だろう。(吉木正彦)

2010年11月12日更新

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