h_column.gif

はてなブックマークに登録 Yahoo!ブックマークに登録 Twitterに投稿
印刷する 印刷する
トップ |最近の論説
武雄市図書館運営委託 「質」保つ根本議論不可欠

 武雄市が市図書館の運営に指定管理者制度を導入し、レンタルソフト店「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に運営委託する計画を明らかにした。図書館への同制度導入については、これまでもさまざまな議論がなされている。利便性や質の維持向上などについて、利用者側に立った長期的視点での論議が欠かせない。

 市の説明によると、運営委託は来年4月からで、開館時間を1日4時間延長し、無休で365日開館する。雑誌や文具を販売するスペース、蔵書を持ち込めるカフェも設ける。貸し出しカードはCCCの「Tカード」を導入。本を借りてポイントがつく。施設の改築、併設している歴史資料館の移転も検討する。

 日本図書館協会は指定管理者制度導入には否定的だ。理由として(1)入館料がない図書館事業は収益が見込みにくい(2)運営委託期間が限られるため専門性の蓄積や長期的視点での蔵書、資料収集が保証されない-などを挙げる。2008年の参院委員会では当時の文部科学相が「公立図書館への指定管理者制度導入はなじまない」と発言している。

 具体的に言えば、入場料があるスポーツ施設などは運営努力で入場者が増えれば収入も増えるが、図書館は逆にコスト増になる。採算割れで撤退したケースもあったという。10年以上先の需要や必要性を見越した蔵書選びなど、表には見えにくい専門性が不可欠だが、そうしたノウハウを持つ企業はないという。民間の専門性を生かして運営を改善し、経費節減にもつなげる指定管理者制度の発想と図書館は相いれないとする。

 ただ一方で、運営委託で開館時間が延長され、利用者に好評な事例などを挙げ「図書館もさらなる運営努力が必要」とする。

 武雄市の今回の計画は、これまでの運営委託とは違った面も持つ。ひとつは雑誌や文具販売を許可することで収益が得られる点。もうひとつは個人情報管理の問題だ。

 指定管理者が本を販売するケースは日比谷図書文化館(東京)などであるが、「収益というよりサービス程度」(同館)。CCCがどの程度の雑誌や文具を扱うのかは分かっていないが、本格的なら例がないという。この構想には地元同業者から反発もある。

 個人情報の問題は、貸し出しカードにCCCが運営管理する「Tカード」を使う点だ。本を借りてポイントが得られ、貸し出し履歴に合った新刊情報などが提供されるという。魅力的にも映るが、現状では本を返却すれば消去されている情報を、民間企業が保存、活用することに疑問を示す意見は多い。

 日本図書館協会は1979年の「図書館の自由に関する宣言」で「利用者の読書事実を外部に漏らさない」とうたった。背景には戦中、戦後に閲覧履歴が思想調査に使われたことがある。ICT社会の進展で情報の活用方法は進化しているが、閲覧履歴が重要な個人情報であることを踏まえて考えることは不可欠だ。

 武雄市図書館の運営問題は6月市議会から議論が始まる。要は将来にわたって質の高いサービスを提供することが担保できるか。目先の利便性向上だけに目を奪われず、事例を調べて問題点を把握し、運営の本質に目を向けた協議が必要だ。(小野靖久)

2012年05月20日更新

Copyright(c)Saga Shimbun Co.,Ltd