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虚偽捜査報告書 検察不信広げる灰色決着

 虚偽の捜査報告書を作成したとして告発されていた元東京地検特捜部の検事に対し、最高検は「嫌疑不十分」として不起訴、前特捜部長ら当時の上司6人は「嫌疑なし」で不起訴にした。減給や戒告などの懲戒処分も発表したが、身内に甘い処分で一般の理解は得られそうにない。

 この事件は、小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の収支報告書虚偽記入事件をめぐる検察側の不祥事。検事が元秘書の再聴取内容を記した捜査報告書に実際にはなかったやりとりを記載、小沢氏の起訴について審議した検察審査会に提出した。

 元秘書が小沢氏の関与を認めた理由として、「検事から『やくざの親分を守るためうそをつくのと同じことをしたら、選挙民を裏切ることになる』と言われたのが効いた」などと一問一答方式で記されていたが、事実ではなかったことが公判で明らかになり、市民団体が検事らを刑事告発していた。

 最高検は「読み手に誤解を与えかねない面で不正確だった」としながらも、虚偽文書を作る「故意を認めるのは困難」と判断した。審査会に提出した不起訴記録には特定の証拠を除外した形跡がないため、「起訴相当議決となるように誘導する意図は認められない」としている。

 また、証拠に対する検察官の評価を整理した報告書に、元代表の共謀認定に関わる部分にアンダーラインが引かれていたことについても、誘導の意図は認められないと結論付けた。「誤解を受ける恐れが否定できない」と指摘しつつも、最後は身内寄りの解釈に終わっている。

 巧妙に虚偽記述をもぐり込ませるやり方の意図や組織的な関与について、灰色決着を図ったと言うしかない。検察幹部は「(検事)本人が否認し、故意を立証できない以上、起訴はできない」と釈明したが、一般人の事件でもその程度で済ますのだろうか。

 小沢氏の立件には、担当検事よりも一部の幹部が積極的だったとされる。検察自身による捜査で起訴できなかったため、審査会での「逆転起訴」という筋書きを立てた。そして検事は上司の意向をくみ取って進めようとしたとの見方があったが、検証では「個人の問題」に終わった。

 任意聴取による調べでは解明に限界がある。大阪地検の不祥事では検事を逮捕して調べた。両者の姿勢の違いは大きく、その点でも組織的な関与という疑念を晴らしたとは思えない。

 刑事責任の代わりに、懲戒処分を重くすることでバランスを取ったのだろうが、ことは「公益の代表」である検察の信用に関わる問題。それで納得するのは難しい。告発した市民団体は審査会に申し立てる方針という。審査会の「起訴議決」という皮肉な結果につながる可能性もある。

 検察の職務に絡んだ不祥事が後を絶たない。身近では佐賀地検の検事(後に辞職)が佐賀市農協元組合長=無罪確定=に脅迫的な取り調べをしたケースがある。2005年に出た処分は厳重注意という軽さだった。

 最高検は改善策も打ち出したが、調査の不徹底と処分の軽さは司法に対する不信感を広げる。内部調査では常に「甘い」という批判がつきまとう。この種の事件では外部機関で徹底した検証が必要ではないか。(宇都宮忠)

2012年06月29日更新

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