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人間中心のまちづくり(12年4月29日)

vol.1 ユニバーサルデザイン都市

 県民運動「佐賀から日本のやさしさを~広げよう、ユニバーサルデザイン」の2012年度テーマは「暮らしを豊かに」。ユニバーサルデザインの視点を生かし、だれもが暮らしやすく、多様なライフスタイルにも対応する取り組みにスポットを当てます。第1回は、「ユニバーサルデザイン都市」の姿を考えます。

ブラジル、クリチバ 車と公共交通が共存

 日本ではユニバーサルデザイン(UD)の理念に沿ったまちづくりを目指す自治体が増えている。一方で、公共施設の段差をなくすなど個別の施策は打ち出せても、「まちづくり全体の具体的イメージが浮かばない」とする声も多い。「住民満足度90%超」というブラジルのUD都市・クリチバを例に、そのヒントを探る。

中心部走る バス専用道路

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 ブラジル南部のパナラ州の州都・クリチバ市。佐賀市とほぼ同じ432平方キロメートルの面積に約150万人の市民が暮らすこのまちは、ユニバーサルデザイン都市として世界の注目を集めている。

 「実際に訪れてみて、われわれが目指すべき姿が何となく見えてきた」。UDの理念を生かしたまちづくり、人づくりに取り組む佐賀県の松尾一夫・地域福祉課副課長(当時)は、今年1月末から約2週間、クリチバを研修で訪れた印象をこう話す。
 松尾さんによると、クリチバが1960年代から目指してきたテーマは「人間中心のまちづくり」。それに伴う都市計画、土地利用政策を継続し、結果的に「人にやさしい」というUDの理念に結びついた。
 クリチバの都市計画の根底にあるのは、自動車との共生、共存だ。中心市街地の中央を走る幹線道路を一つの大通りとせず、平行して走る3本の道路に分散。中央を走る道路の真ん中はバス専用道路で、ビルはその道路に沿って建ち並ぶため、ビルで働く人たちはおのずからバス利用する。また、幹線道路の機能を1本の道路に集中させることで、バスの運行をスムーズにし、車の渋滞まで回避できるというわけだ。

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 バスを中心とした交通システムは、それまで自動車中心だった市民の足を激変させたという。クリチバのバスシステムの“象徴”とされるのが、同市が独自に考案した「チューブ」といわれるバス停。文字通り円筒型の停留所で、床面がノンステップバスの床面と同じ高さになっており、バスは到着と同時にスロープを出してチューブと連結する。車いすやベビーカー利用者、杖をつくお年寄りなども時間を掛けることなく乗り込める仕組みだ。
 「チューブはどんなに遠くても500メートル以内に置かれ、バスも次から次にやってくる感じ」と松尾さん。バス乗降客は1日当たり延べ250万人。「市内には民間のバス会社約10が社乗り入れており、どこも行政からの補助金を受けずに経営していると聞いて驚いた」

歩行者天国 憩いの場に

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 クリチバ市内では、歩道と車道の段差も徹底してスロープ化。街頭のデザインに至るまでUDの理念を取り込んで市民生活を支えている。とりわけ松尾さんが注目したのが歩行者天国だ。
 クリチバは1966年にクリチバ都市計画研究所(IPPUC・イプキ)を設立し、この組織が「人にやさしいまちづくり」を進める原動力となった。イプキの初代所長で、71年から3期、市長を務めたジャイメ・レルネルさんは「人間中心のまちづくりの手始めが歩行者天国だった」と、松尾さんに説明した。
 「至る所にベンチが設置されていて、多くの人が和やかに談笑していた。まさに市民の憩いの場」。松尾さんは、年齢や性別、障害の有無、人種などに関係なく、すべての人にとって過ごしやすいこの空間に目を見張った。

緑地化にも UDの要素

 クリチバは環境都市としても有名で、緑化政策にもUDの要素を反映させている。住宅地の道路をあえて行き止まりに設計し、その先の空間を「道路公園」として緑地化。地域住民以外の車の進入を抑え、住民が安心して歩行できるようにしている。ドライバーにとっては利便性に欠けるけれども、人の安全を最優先しながら緑地の増加にも貢献している。
 佐賀県がUDに本格的に取り組み始めて約10年。環境や文化、人口減少化など違いはあるが、クリチバも佐賀県も、UDを「配慮」ではなく「前提」ととらえる姿勢は似ている。松尾さんは「身の丈にあった独自のアイデアがあれば、佐賀県が『日本のクリチバ』になることは不可能ではないはず」と話した。

佐賀のUD取り組み 麗水世界博で発信へ

見学ツアー参加も募集

 韓国麗水(ヨス)市で開かれる「麗水世界博覧会」(5月12日~8月12日)の一環として、ユニバーサルデザイン(UD)シンポジウムが6月10日に同会場内で開かれる。佐賀県から古川康知事が参加し、県が推進するUDの取り組みを世界にアピールする。同シンポに合わせ見学ツアーも企画されている。
 古川知事は、佐賀県が力を入れているパーキングパーミット(身障者用駐車場利用証)制度などを紹介。「配慮ではなく前提」という視点から、UDとは何かを訴える。
 シンポ開催に合わせ、西鉄旅行佐賀支社は6月9日から2泊3日の一般見学ツアー(30人)を実施する。福岡空港発着で旅行代金は6万4000円円(空港税など別途8000円必要)。5月25日締め切り。問い合わせは西鉄旅行佐賀支社、電話0952(24)7245。

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