トップ |その他
メディアアーティスト 八谷和彦さん (14年2月2日掲載)
八谷和彦さん 

 

 「好奇心と成功体験が大切」

 夢ではなくリアルな目標を

 一人一人のいろんな夢を応援しようと、佐賀新聞社が今年8月の創刊130周年に向けて展開中の「さがの未来(あした)へ夢コラボ」。7回目となる今回、インタビューしたのは佐賀市出身のメディアアーティスト八谷和彦さん(47)。人気アニメ「風の谷のナウシカ」で主人公が乗る飛行具メーヴェを再現、実際に飛ばすプロジェクトに、10年がかりで挑んできました。そんな「夢のような話」を、どうやって実現させたのでしょうか。


■かわいいクマのキャラクターで大ヒットしたメールソフト「ポストペット」が代表作ですが、今回はメーヴェの実機ですね。夢をかなえるには何が必要ですか。
 一番は好奇心。それから、小さな成功体験かな。
 今回も、どうすれば空を飛べるんだろうという好奇心があって、航空力学などを調べてみて、ハンググライダーの訓練をしてみたり。その過程を面白がる力が欠かせませんね。
 前に進むには、小さな成功体験の積み重ねが必要です。誰かの押しつけではなく、自分なりにやってみて、初めて成功体験になってくる。
 小学生のころ、工作が好きで模型店で部品を買ってきては組み立ててました。部屋が散らかっても、両親は好きにやらせてくれましたね。好奇心を育む環境って、あると思いますね。

 

 ステップ積み重ね

■東京芸大先端芸術表現科の准教授でもある。学生たちに何を伝えたいと考えてますか。
 アートの世界は「多産多死」。多くの作品が生まれても、その多くはものになっていかない厳しい世界です。ですから、学生たちにはアーティストになれるよ、なんて甘いことは言いません。自分で自分の可能性をなんとかしないといけないわけです。
 講義ではプレゼンテーションの仕方など、たとえアーティストにならなくても、社会人として使える技術を教えたいとはっきり言ってます。
 実は、僕自身は夢という言葉をあまり使いません。というのは、「夢なら実現しなくてもいいんじゃないか」って思ってしまうからです。むしろ、リアルに目標を立てて、どうすればいいのか、きちんとステップを踏んでいく。夢の実現は、そんなステップの積み重ねなんだと思います。

 

■大学卒業後、7年間のサラリーマン生活がありますね。すぐにアーティストとしてやっていこうという気にはならなかったんですか。
 全く、ありませんでしたね。それは社会人としての基礎を身につけておけば、後でつぶしがきくし、何かと役に立つという読みがあったからです。アーティストとしてうまくいかなくても、もう一度、再就職だってできる。
 学生時代の勉強も同じですよね。そのときは何に役立つか分からなくても、自分の可能性を広げる作業です。高校時代に学んだ物理が、今、飛行機を飛ばすのに役に立っているわけです。

 

 最初が一番大変

■メーヴェに乗ってみたいという人はたくさんいるでしょうけど、量産はしないんですか。
 量産はしません。航空局の許可が取れれば、年内にも高度200㍍以内の飛行を実現させて、このプロジェクトは終了させます。最終的にはどこかの美術館に収蔵したいと思っています。
 どんな山を登るにしても、最初が一番大変です。1人登れば、後に続く人はどうすればいいか分かるようになる。同じように飛んでみたい人は、参考にしてください、ということですね。
 次の作品は、大人を「高い、高い」してくれるロボットを作りたいと思っています。
 小さな子どもを抱っこしているお父さん、お母さんを街中で見かけますが、わが子がどんなにむずかっても決して落とさない。その動きって、実は「愛」そのものじゃないかと。

 

=略歴=
 はちや・かずひこ 1966年生まれ、佐賀市出身。佐賀北高―九州芸工大(現九大芸術工学部)卒。コンサルティング会社勤務を経て、ソフトウェア開発などを手掛ける「ペットワークス」を設立。作品に「ポストペット」、ジェットエンジン付きスケートボード「エアボード」など。著書に『ナウシカの飛行具、作ってみた』(幻冬舎)。